通常国会開幕の初日には、永田町に「七五三」現象が起きる。一部の男性議員は紋付き羽織・袴(はかま)姿、女性議員はとっておきの着物姿で本会議場に入ってくる。和服文化を推奨する議員連盟のパフォーマンスである。
議員連盟は通称「議連」と呼ばれているが、学校で言えばクラブ活動のサークルのようなもの。公的機関ではなく、議員たちが任意で作る団体である。その数およそ600はあると言われているが、正確な数や実態は把握されていない。国会の事務局や政党も、ある程度は知っているはずだが、公表は拒否する。任意団体だからという理由もあるが、むしろ存在を知られたくないものもあるからだ。
本来は、超党派の議員が、共通の目的やテーマを持続的に論議し、発展させようという趣旨の集団である。
400人近い加盟者がいる日中友好議連を筆頭に、諸外国との人脈作りを目的とする超党派友好議連は100前後ある。しかし、鈴木宗男氏のように、あまり注目されない旧ソ連諸国や中近東、アフリカなど16カ国との友好議連を作り、自らが会長となり、内部を橋本派で独占したケースもある。
鈴木氏は、相手国に対し、議連が公的機関であるかのように振る舞い、政府の途上国援助(ODA)利権を開拓したと言われている。このように、派閥単位の議連もあれば、与党内で新勢力結成を目指す秘密グループが、カムフラージュで議連を装うこともある。
年末年始になると、業界支援型の族議員議連が、活発に動く。工業界とか、農業界といった大ざっぱなものではなく、ハイテク業界なら「ナノテク議連」「コンテンツ議連」などが並び、農業界なら「トマト議連」などと作物ごとの団体がある。これらの議連は、献金と票の稼ぎ場所でもあり、予算獲得に奔走する。
金と票のためのコネ作りに役立つなら、多くの議連に名を連ねる方が得策だと考え、100以上の議連に入り、巨額の会費を負担する議員もいる。しかし現実にはそんなに活動できるはずはない。実際の話、議連の7、8割はたてまえだけで有名無実だ。
私は当初、故・小渕恵三氏が会長を務める「映画議連」に入った。映画界が疲弊しているのに、まったく国策がないからだ。ところが、一年たっても会合すら開かれない。その半年後、某ホテルに招集がかかった。行ってみると、総会とは名ばかりのパーティーだった。女優が数人集められ、議員たちは一緒に記念撮影してお開きになった。バカバカしいので、即刻退会届を出した。
とはいえ、まじめに活動する議連も少数だが存在する。
例えば、「環境ホルモン・ダイオキシン問題に取り組む議連」は、ダイオキシン緊急措置法を作る主体を担った。
私が会長を務めた「公共事業チェック議員の会」は、財政赤字と環境破壊の元凶を追及する議連で、与党や官僚の既得利権を脅かす存在だ。公共事業以外さしたる産業がない地方では、有権者の反発をかう危険も背負う。当然選挙は不利になるので、議員には度胸が必要だ。議連も志次第では、政党顔負けの力を持ちうるのである。
(2005年2月19日「朝日新聞」別冊【be】「読み解く」より)